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墓石は雪に埋まるであろう

 美也子への年賀状は只一枚 佐和子からだった。

夕方になって雪は 小降りから本降りになっている。
元日の濡れ雪はいや増し 屋根の積雪がこの冬どのようなサンカに至るか、雨だれの音はしていたし、早くも 独りでにこけている。

 長男の洋市は、施設から遠くに住んでいる。たまに出向いてくる。

 親の美也子は、死んでこの長男が守る墓すなわち嫁ぎ先の誉田家の墓所に入りたくない。

 実家の川上家のより広大な墓地に、父母とともに収まりたいと思っていた。

 ところが、川上家の当主である佐和子は、美也子のその願いを拒否した。

 昨年、子のない佐和子と親戚の藤堂家の間で、養子縁組があった。藤堂浩が次期当主となる。

  そこで、浩の親である藤堂誠、養子縁組を画策した当の張本人であるが、こちらに話を持ちかけて、親の墓を頼んでみることが良いと、祐次は洋市に交渉を提案することを思い至った。

 それは、親が死んでからではなく、親に、行き着くサキを得た、生きている安心感として元気をもたらすだろう。
 そう思った。
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