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 不味さとの闘い

たった一個の梅干を差し出すために、

 祐次はたそがれの国道を魔の山に向かった。

向かうは西の極楽浄土だったのかもしれない。

 東に向かうよりも、夕日の法に行くことは明るい気分が射しているのか。

 配膳の10分前に着くと、

親は、テーブルに向かい、相変わらず、

 目頭を擦っていた。

 涙、流れない悲しみが、いつも

 親を支配しているのに違いない。

 目頭は切れ、目の下は黒ずんでいるが、

 不思議とそれ以上に悪化しては行かない。

 不味い と言っては、膳を押しやり、

 エプロンも卓上からはずしてしまっているが、

 しばらくすると引き戻して、また少し食べ、

 押し返しては、引き戻し繰り返しの

 パターンになるらしい。


 まずい配給食の食い方があるのだ。

 この国の老兵は不味さに耐えていた。
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