不味さとの闘い Cafe 2008年03月17日 たった一個の梅干を差し出すために、 祐次はたそがれの国道を魔の山に向かった。向かうは西の極楽浄土だったのかもしれない。 東に向かうよりも、夕日の法に行くことは明るい気分が射しているのか。 配膳の10分前に着くと、親は、テーブルに向かい、相変わらず、 目頭を擦っていた。 涙、流れない悲しみが、いつも 親を支配しているのに違いない。 目頭は切れ、目の下は黒ずんでいるが、 不思議とそれ以上に悪化しては行かない。 不味い と言っては、膳を押しやり、 エプロンも卓上からはずしてしまっているが、 しばらくすると引き戻して、また少し食べ、 押し返しては、引き戻し繰り返しの パターンになるらしい。 まずい配給食の食い方があるのだ。 この国の老兵は不味さに耐えていた。 PR